万引き家族 貧困 自己肯定感

この前、『万引き家族』を見た。

早く感想を書かなくてはと思っていたのだけど、もう5日くらい時が経ってしまったのでうろ覚えだけど感想を残す。

 

 

映画館を出て一言でた言葉は

 

「生々しい」

 

だった。

 

 

作品を通して人間の弱さや汚さが、真っ直ぐに表現されている。そこには、見栄や正義に塗られた虚偽もない。境遇に負けず頑張ろう!なんてよくある美談でもなくて、登場人物は、逃げるし、騙すし、諦める。

 

とても人間的で生臭い。

 

 

 

個人的には、夫婦が自分自身に諦めているところが見ていて一番胸が苦しかった。女が刑務所で「この子は私たちじゃダメなんだよ。」と言うところや、男が「自分には何もなくて、万引きしか教えることがない」というところは、やるせない気持ちになって泣いた。

 

そこには希望も期待もない。

「貧乏で出来損ない」と自分自身にラベリングしてしまっているところ、そして思わざるを得ない環境で育った事実に、胸が苦しくなった。

 

自己肯定感の低さは人生のモチベーションを左右する。

貧困なのは必ずしもその人のせいではない。でもそういうふうに教えてくれる人は周りにいただろうか。あなたは明るく堂々と生きていく価値があるんだと、力強く背中を押してくれる人はいただろうか。

貧困の一番問題は、その人の自己肯定感を低くしてしまうことではないか。

貧困にいても、自己肯定感さえあれば希望や夢を持てる。そこから、踏ん張ることができるし、今の日本ならそういう人にもチャンスが与えられる環境が整っているはずだ。

こんな何も苦労していないような自分が偉そうなことは言えないけど。

 

 

 

とはいえ、日本はまだ恵まれているんだなとは思う。

 

この作品は、万引き、育児放棄、年金不正受給、など様々な日本の社会問題を映し出している。

監督本人も、そういう日本が抱える社会問題を描きたかったって言っていたような(記憶が正しければ)。これを見た多くの人は、豊かに見える日本にも貧困にあえぐ人がいるのか、日本も落ちぶれたなだとか思うだろう。でも私は、貧困を社会問題として警鐘を鳴らす人がいて、それを観た人に問題意識が少しでも芽生えること自体、日本が恵まれている証拠だと思う。私が留学をしていたメキシコでは、貧困は当たり前にあった。富裕層が暮らす隣の路地に、ストリートチルドレンもいることもあった。テラス席で食事をしていると物乞いされることもあった。しかし、すぐ近くにいるにも関わらず富裕層が貧困層を意識することはほとんど無い。完全に日常の風景に同化して見えない存在になっているのだ。自分たちには関係のない話だと、無意識にもそういう思っている。それを悪だとかかわいそうだとか言いたいわけではないけど、世界にはそういう国もあると考えると日本はまだ、というかだいぶ、恵まれている。この映画を見たほとんどの人が、知らなかった貧困の状況に衝撃を受け、苦しくなるのだから。

 

 

私はどうしても、同情して行動を起こすことはできないけど、そういう人間だからこそこの映画をみる価値はあったかなと思う。

 

見てよかった。

多分これからも記憶に残り続ける数少ない映画のうちの一つになった気がする。